ICIのお仕事 コミュニケーション戦略支援

BOSSのつぶやき
~ ICIのお仕事 コミュニケーション戦略支援 ~

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先月、ご紹介した「フロントシステム」という考え方の基本は、仕事の現場のためになる、仕事が楽しくなるような仕組みを、ITを使って提供するということにある。しかし、一つの仕事の現場だけ、あるいは特定の個人だけがそのシステムを持ったとしてもあまり役には立たないのだ。なので、フロントシステムをうまく活用していくには、こうした仕事の現場どうしあるいは現場を支える組織とのコミュニケーションをどのように作っていくか、ということが次の話になる。

先日、Cloudforceのスペシャル・セッションでコリン・パウエル氏の話を聞く機会があった。最近のアメリカ軍では、前線の部隊と本部とを組織構造にディペンドした多段階に上下するというコミュニケーションラインではなく、最前線の一兵士と司令部を直接結ぶようなコミュニケーションになっている、という話があった。前線で状況が変化した場合、瞬間に司令部でも変化を感知、同時に現場の兵士が状況に合わせて活動を変化させ、その変化もリアルタイムに確認出来て、必要があれば、活動への指示を出す、というようなコミュニケーションが必要になっている、ということのようだ。  従来であれば、状況を上位者に報告し、命令を請求、上位者はさらに多段階にコミュニケーションラインをたどって司令部の判断を得て、ラインを元に戻って最前線に命令が伝えられる、という動きになるのだが、それでは、アフガニスタンやイラクを含めた世界中に散らばったアメリカ軍の活動を効果的に動かす事が出来ない、ということであった。

軍隊や企業にかかわらず、組織の運営にあたっては個々のオペレーションの現場で何が起きているのかを出来るだけ即時にすべて把握することが重要だということは言うまでもない。そのために業務報告とか日報、あるいはミーティングなどが行われるわけだが、こうした従来の実態把握手法では、下位の情報を効率的に取得し、上位からの命令をいかに正確に伝えるかということに力点が置かれている。  この方式は、組織にとって、外部との関係が固定的で、また環境が変化しても計画が見直せる時間がある、ということを前提としている。ところが、現実には、競合相手の作戦や環境の変化が自分たちの予想を超えるようなこともあるし、そうそう簡単に環境に応じた計画変更が可能という訳ではない。したがって、これまでITはこうした環境変化を「発見」したり現場に対して「作業変更」を徹底したりする「風通しの良い」「スピード感のある」コミュニケーションラインを作る、あるいは維持するための道具として使われる場面が多かった。  それは何かと言うと、組織の画一性を担保し、全員が決められたことを正確に行う、という「前提」を作り出しているということなのだ。企業用のシステム開発では、こうした組織の効率や生産性の向上を目指すことが目的となった設計開発が行われてきたことは否めない。

現場に力点を置いたシステムである「フロントシステム」が必要とするコミュニケーションを支えるシステムの考えは、これとは異なる。パウエル将軍が話した「最近のアメリカ軍」のように、「現場」でオペレーション(作業、業務)に携わる一人一人の作業者が、その業務に責任を持ち現場を支援する(はずの)本部と直接コンタクトする、というシステムが「フロントシステム」が理想とするコミュニケーションである。また、それは組織内に留まらず、組織外部の顧客や取引先などとのコミュニケーションも負担を感ずる事なく出来るようにすることも必要になる場合もある。  では、このようなコミュニケーションを支援するシステムを設計、開発し運営して行くために必要な考え方にはどのようなものかを見て行こう。

重要な概念は、「仮想化」、だと考えている。これは、VMとかVLAN、仮想クライアントといった一つ一つの要素技術が重要ということではなく、システムの考え方として、組織やミッションに必要なコミュニケーションを仮想化することを考えよう、ということである。  まず、そのミッション(仕事、業務)の目的を実現するための参加者を結ぶ「論理的な」コミュニケーションネットワークを考える事がその一歩となる。重要なことは、そのミッションの目的、を明確に定義することになる。目的が違えば、コミュニケーションも変るからだ。物流システムでも、鮮魚と雑貨ではコミュニケーションは異なる。それは会社が違うからとか商品が違うからではなく、物流システムの目的が違うからだ。鮮魚は、生産地(上陸地)と配送時間の関係をマーケットに対して最適にすることがシステムの目的だし、雑貨は、消費者のニーズに対してその品揃えを最適にすることを目的とするからだ。鮮魚は、マーケットに対して生産量や生産地を特定できないが、雑貨は、マーケットニーズに対して自由に生産量や生産地をコントロールできる。  当然、この二つのシステムでは必要とされるコミュニケーションは異なりシステムも違う。一方で一つの小売りチェーン企業が実態として持つシステムの効率を考えると、この違いはそれぞれのシステムを仮想化して一つの物理的ネットワークを利用することで吸収できると考えられる。理論的なシステムの実装はソフトウエアの世界であり、常に異なったコミュニケーションへの要求に対するシステム設計を実体化するよりも、それぞれのミッションの目的を明確にすることで、理論的な複数の目的別システムを一つの実体基盤上に仮想化することで実装がやり易くなるはずだ。

また、仕事を担当する個人の端末という観点でも、仮想化は重要である。重要なのは、エンドポイントの自由度だ。PCであれ、スマホであれ使い勝手を別にすれば、個人が使う情報端末の機種を選ばない、ということだ。おそらく、現場との直接のコンタクトを実現するには、個人の情報機器のコストは馬鹿にならないし、統一的な管理は軍隊でもない限りかなり費用が必要となる。そこを解決するのも、仮想化、の考えである。旧来のシステムでは、業務用の端末はPCであれPDAであれ、個々に必要なネットワークの端末システムとして等路くれて初めて仕事に使えるエンドポイントになる。   もちろん一つの機器が複数のネットワークに登録されることは可能だが、物理的にも登録が必要になる。これを仮想化することで、機器とネットワークを結びつけるのではなく、作業者個人と仮想化されたコミュニケーションネットワークを結びつけることができるようになる。スマートフォンのアプリが一つ一つの業務端末であると考えれば良いわけである。また、アプリごとに個人認証も可能であるし、端末を特定し自動的に認証することもできる。iPhoneでもNEXUS7でもMacでもwindowsPCでも僕は僕だし、Facebookの僕も居れば、twitterの僕も居る。これが、「フロントシステム」のエンドポイントになる。

また、これは、自由度の高いコミュニケーションを実装する際のセキュリティにも当てはまるだろう。どうやって、様々なハードや物理的ネットワークの安全性を管理していくのだろうか?これとても、目的別の仮想的なコミュニケーションネットワークをソフトウエアでセキュアにする、という考え方が必要なはずである。  物理的なセキュリティは、システムというより建物の管理や自分の持ち物の管理の範疇であるはずだ。「黒革の手帳」と「iPhone」は個人の持ち物として何が違うのだろう?黒革の手帳、は遠隔から消す事が出来ないが、仮想化されたネットワークと接続しているだけの「箱」であれば、それを紛失しても、接続のキーさえ瞬時に変更できれば、真っ白なページの手帳だ。

今から20年近く昔、大規模な金融機関の情報ネットワークのIP化を手がけた時に、太い一本の物理ケーブルから「スーパーセットトップボックス」を通して店舗内の非IP通信、LAN、音声、画像などの個別のネットワークとコンテンツ別のデータセンターが結ばれる、という夢を描いたことがあった。実際は、いくつかのルータとサーバーでネットワークを構築したのだが、手軽にコンセントから電気が使えるように、情報も流れるように出来るという時代は、すでに来ている。  それは、クラウドであり仮想化でありスマートフォンと呼ばれる手持ちのユニファイドコミュニケーション機器の技術である。ICIは設立当初から、これらをどう使うかを提案、設計できる技術者の集団になりたいと思っている。

(i^c^i)


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