風薫る

BOSSのつぶやき  2015年5月
〜 風薫る 〜

ゴールデンウィークはまさに五月晴れが続いたが、連休が明けたとたんに5月と言うのに台風が来た。5月に関東に台風が「接近」したのは、気象庁の統計(*1)では、直近は2004年なので、11年ぶりということか。5月までに発生数が7個というのも気象庁のサイト(*2)をざっとみた感じでは10年以内では一番多い。まあ、だから何か、原発を再稼働しようとか、室内の冷房を止めようとか言う気はない。とは言え、やはりもしかしたら気候の変動期になったのかもしれないとは思う。たぶん、数千万年後に地層を見ると「この辺りで不連続な変化がありましたね」と解説されるような時期になったのかも。閑話休題。

風薫る、というのが5月を形容する言葉で使われるが、季語としては「夏」である。今年の暦は、二十四節気では立夏が6日なので、まさに今日辺り(5月15日前後)は初夏の薫風が吹き渡る時期になる。七十二候で言えば、この時期は、蛙(かえる)鳴き始める、蚯蚓(みみず)出る、竹笋(たけのこ)生ず、になる。確かに、蛙の声が聞こえるようになり、たけのこが初物でなくなり庶民の口にも入るようになる時期ではある。みみず、はと言うと、最近は土が無くなったので街中(まちなか)では分からないが、犬の散歩で多摩川の河川敷を歩くと、カモメとか鴨などの水鳥の糞からみみずの死骸にワンコの興味が移ってくるのは、たしかにこの時期である。七十二候のうち本朝七十二候(*3)は中国の暦を日本の風土に合わせて読み替えたものだそうで、日本の季節ごとの風景を活写しているようだ。これらは、太陽高度の変化から決めたものではあるが、中国から伝来した二十四節気にしても七十二候にしても、そこに生活感覚を取り入れた優れものである。

そう言う意味では、2月までが冬、3月〜5月が春、6月〜8月が夏という季節感は、地中海沿岸のもので、やはり、温帯モンスーンにある日本では若干の違和感があるように思う。私が学校や会社で勉強や仕事をしていた頃は、6月から夏服というように衣替えをしていたが、温暖化とは関係なく5月中旬以降は、詰襟や合の背広はキツかった。背広になってからは、上着は、4月から夏物に、6月からは上着無しに、という替え方だが、それでも、5月連休過ぎには結局日中は上着を脱ぐことが多かったと思う。旧暦で見ると立夏が5月初めなので、5月連休前に衣替えをする最近のクールビズの方が日本の風土にはフィットしている。江戸期の武家社会でも、立夏から処暑あたりまでを単衣としたようである(*4)。

七十二候を眺めつつ、つらつらと考えるに、そう言う意味では、こうした暦をきちんと利用してきた頃(江戸時代以前)と比較して、季節感が大きく変ったようでもないのかと思う。8月の初めに立秋があるのは奇異と感じこともあるが、決して昔も立秋の頃が涼しかった訳ではなく、立秋のほぼ2週間後の8月下旬に処暑となって暑さが少し落ち着くとされている。きっと、現代からみて節気の文字が奇異に見えるのは、風景の中にある季節が見えなくなってき証左ではないか。夏に向う5月はどんなに爽やかな風が吹いても、陽は日に日に高くなり、照らされれば真夏並みに暑く感じる一方で、朝夕の風はまだまだ爽やかである。まさに、薫風であって、我が家のワンコも散歩より風の匂いを嗅ぐ方に忙しいようだ。良い季節だが、これから梅雨、猛暑となるが、そうなっても季節は楽しむもので、文句を言うものではない、と心がけよう。
今月は短めに。

(*1) http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/typhoon/statistics/generation/generation.html
(*2) http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/typhoon/statistics/accession/kanto_koshin.html
(*3) http://www5a.biglobe.ne.jp/%257eaccent/kazeno/calendar/sitijuuni.htm
(*4) http://www.i-nekko.jp/sahou/kirumono/koromo/
を参照した。


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