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監視社会

最近の犯罪は、監視カメラで犯人が検挙されることが多い。監視カメラの記録は重要な犯罪証拠であり、犯罪抑止効果が期待できるが、プライバシー保護の観点からは課題が多い。

ところで、2018年11月12日の日経ビジネスは、『ここまで来た監視社会』と題して特集を組んだ。
ジョージ・オーウェルが1949年に書いた小説『一九八四年』に「全市民、少なくとも警戒にするにたる市民は全員、1日24時間、警察の監視下に置く」『監視国家』が描かれている。中国ウィグル自治区では、中国当局がウィグル族をイスラム過激思想に染まった民族とみなし、監視カメラと不審者を自動で見つけ出す顔認証システムの設置を進めた。

また、2017年にスマホに『スパイウェア』と呼ばれるアプリを入れることを住民に強要し、チャットの内容、スマホの写真などが当局に送られる。さらに、自治区内の自動車にGPSの取り付けを義務付けて、すでに百数十万台に取り付け完了した。17年から「無料健康診断」として、DNA、虹彩情報、指紋、血液を強制採取して、すでに9割以上の住民の採取が終わった。

16年8月から構築を始めた危険分子特定システム「IJOP」では、監視カメラの映像、通行する車両や人のデータ、銀行口座、宗教など、ありとあらゆる個人情報を解析し、反動的な人物を自動的にリストアップする。

13億人を超える人民の統治には、機械による監視が有効と共産党指導部は判断して、小説『一九八四年』の世界が実現しようとしている。
 
米ロスアンゼルス警察は犯罪予測システムを6年前から導入し、時間帯ごとの犯罪が起きそうな地域を見回る。「レーザー」と呼ばれる要注意人物をリストアップし、その人物の動向を追って、犯罪のけん制を狙っている。
この様なシステムの導入で、暴力犯罪は5.4%、殺人は22.6%減った。
京都府警も2016年から犯罪予測システムを導入し、犯人検挙率を従来の20%から30%まで引き上げた。

監視カメラの設置台数を比較すると、人口1,000人あたり、米国155台、中国130台、英国100台、に比べると日本40台とまだ見劣りする。日本の監視システムが遅れているのは、プライバシー保護の問題が大きく影響している。そのため、監視カメラの映像、公共交通機関の通行や乗降データなど治安の維持に活用できるデータは数多くあるが、死蔵されている。

そこで、民間の小売店などの商業施設は自主的に店舗の映像データを蓄積し、AIでする『AIガードマン』を導入し、万引きなどを未然に防止するシステムが効果をあげている。

また、『MDM』と呼ばれるモバイル機器の監視システムの中でも、エムオーテックス社の開発した『ランスコープAn』は導入社数が3,500社を超える、スマホの監視システムである。このシステムはGPSを利用して1分ごとに社員の移動データを把握する。さらに、携帯電話の発信と着信の相手と通話時間、アプリの利用状況、インターネットの接続情報、メールの送信相手や内容、SDカードの抜き差し、など携帯電話の情報から社員の1日の行動が明らかになる。メールの内容はAIによって、適切なメールか不適切なものかチェックするし、削除されたデータも復元し、チェックできる。

NTT東日本はオフィスでドローンを飛ばし、従業員の残業を監視しているが、大成建設はこのシステムを月50万円で導入し、月間の残業代を230万円削減した。

監視システム、監視社会はまだ始まったばかりであるが、監視社会に進んでいくことは避けようがないようだ。その時の、法整備、人との関わり方、モラルの問題、個人情報の問題など解決すべき課題は多い。