株式会社アイシーアイ

香港

 1996年にイギリスが中国に返還する直前の香港に駐在していたことがある。

 当時は香港はアジアの金融センターとしており、誠に活気のあふれた都市であった。
 私はN社に勤務していたが、日本企業の駐在員たちの集まりがあり、何人かの人が私に『返還後の香港はどうなる?』との質問が相次いだ。
 N社のアナリストの見通しは、『イギリスと中国の約束は、香港は50年間自治圏とし法律その他の制度を変えることは無いとの約束があり、変化は無い』とのことであったので、そのまま私も伝えた。
 当時でも、『本当かな?』と疑問を投げかける人もいたが、昨今の香港の状況を見る限り、私のとんでもないミス・ジャッジであった。穴があったら入りたい、との思いである。

 当時、不安を感じてカナダやオーストラリアに移住する香港の家族が少なからず居た。

 その後、落ち着いてきたように見えたが、「逃亡犯条例」改正案に端を発し、市民と政府の激しい争いが続いており、先が見えない。香港の人々の、中国本土の政権に対する圧力などの不満が高まった結果である。
 おそらく、かなり多くの家族が香港を脱出し移住する見通しで、香港の経済活動は停滞するであろう。
 中国から見れば、香港に経済活動を頼る必要もなく、むしろ香港の自由・民主主義に基づく自治が、中国本土に伝播するのを恐れているのであろう。
 共産党一党支配がが崩れれば、中国の現政権を揺るがしかねないからである。

 香港の返還前の活気を知る者からすれば、誠に残念なことである。これだけ全世界に情報が駆け巡る時代となると、中国の一党支配が永遠に続くとも思われないのであるが。